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3Dプリンターの可能性

ファッションの歴史において、技術の進歩は常に大きな役割を果たしてきました。1850年代に発明されヨーロッパやアメリカに普及したミシンは、衣服の大量生産を可能にしました。それまではテーラーが顧客に合わせて服を仕立てていましたが、ミシンの導入によって既製服が一般化しました。一部の豊かな人々のものだったファッションを、社会のより広い範囲の人々が享受できるようになったのです。3Dプリンターもまた、衣服の制作プロセスを変え、衣服に対する価値観に変革をもたらすのではないでしょうか。

3Dプリンターは、今まで物理的に実現不可能であった複雑な造形を可能にします。また、データ入稿からプリンター出力という新しい制作プロセスは、劇的に制作スピードを上げるだけでなく、デザイン修正が簡単で、データ制作後はプリンターが自動的に作業を進めてくれるため、手作業を大幅に減らす事ができます。

さらに、インターネットを通じて世界中どこでも入稿、出力が可能になるため、物の輸送の概念を変えていくことでしょう。例えばクライアントが海外にいるときは、相手国で出力すれば国際便を使わなくても製品を相手に届けられるため、輸送の時間やコストを気にする必要がなくなります。もしプリンターが国内で足りない場合は、世界中にデータを送り各国のプリンターで出力すること で急な大量納品に対応できます。また、プリンターの出力スピードを活かし、受注生産でも在庫を抱えることなく、商品をスピーディーにお客様に届けることができるようになると考えています。

今日、情報は瞬時に世界中に行き渡り、需要と供給のある場所や時期もダイナミックに変化しています。地球規模で考えるなら、春夏秋冬というシーズンの概念はそれほど重要ではありません。デザイナーが住む地域は真夏でも、地球の裏側では真冬なのです。次のシーズンに向けて発表したコートを今すぐ着たいというクライアントがいるかもしれません。情報のスピードに合わせて商品を供給するには、生産方法を根本から変える必要があります。

3Dプリントは、私たちが生きる高度情報化社会に一番合った制作プロセスなのです。

3Dプリンターの性能

数ある3Dプリンターの中でも私どもが使用するStratasys社のプリンターは、航空宇宙分野を始め、建築、自動車、医療分野にまで使用される世界トップクオリティーのデバイスです。NASAでは、将来火星の有人探査に使用する車両にストラタシス社の3Dプリンターで出力したパーツを使用しており、軽量で頑丈な最終用途部品としてその十分な耐久性が実証されています。

デザインコンセプト

私が3Dプリンターで表現したいのは、人工的な手法と素材を用いて、限りなく「自然」に近い物を作り出す事。デザインモチーフとしたのは人間の筋肉繊維です。筋肉線維を表現する線以外すべて透明にすることで、まるで体内を覗いているようなデザインにしました。人間の体の内部は、普通は皮膚と衣服に覆われていて見えないため、私たちにはあまりにもグロテスクで非現実的なものに感じられます。私たちの一部でありながら、それは私たちにとって遠いものです。しかし、体内の器官を身近に感じる事によって、人間もまた自然の一部であると再認識することができるでしょう。このアクセサリーは、生体をモチーフとしながらも、その質感や形状は限りなく人工的です。機械によって作り出すことにより、人の手では作り出せない「無機質な生々しさ」が生まれ、2つの相反するコンセプトが融合したのです。これは、今までどんな手法を用いても決して量産することができなかったデザインです。近代における大量生産以降のデザインは、直線的なミニマリズムの美学を押し付けられてきたとも言えるのではないでしょうか。その背景には、生産効率を高めるためという事情があるでしょう。今後、人の手を必要とせずに複雑な造形を可能にする3Dプリンターによって、デザインの価値観は大きく変わるのではないかと考えています。

3Dプリントによるファイナルプロダクトへ

私たちはこれまで、3Dプリンターの未知なる可能性の探求に精力的に取り組んできました。私どもが今回のプロジェクトで目指してきたのは、通常難しいとされてきた、人々が日常の中で身に付ける事ができる耐久性、機能性、そして装飾性を備えた完成度の高いファイナルプロダクトを3Dプリンターで作り出す事であり、1年半の試行錯誤の集大成がここにあります。